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記憶の中の東京 #05 ー 水道橋

水道橋駅 suidobashi エッセイ 東京 街歩き かもめと街

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街は変わりゆく。

毎日のように通った街での出来事も、きれいさっぱり忘れていたはずなのに、変わった街の景色の中に変わらない光景を見つけてハッとする。

水道橋駅の高架下をくぐった向こう側。

角に見えるパチンコ屋はあの時もあったはず。

高校生の頃、お茶の水ゼミナールという塾に通っていて、受験間近のシーズンはそれこそ毎日通っていた。

今思えば水道橋にあるのに「お茶の水」ってややこしいな、と気づいたが、名はとにかく少人数制のクラスでアットホームな雰囲気が心地よく、先生と生徒の距離が近い塾だった。

わずか10人くらいしかいなかった地理のクラスでは、授業の休憩中に先生のサプライズ誕生日パーティーを仕掛けてお祝いした日のことを今でも思い出す。

自分の書いた文章を初めて褒めてくれたのも、茶ゼミ(お茶の水ゼミナールの愛称)にいた国語の先生だった。

小論文の採点で、返ってきた原稿用紙に赤ペンで書かれた「物語が始まるような書き出しがいい」というようなことを書いてくれたこともあった。

作ったものを褒められたことがない自分にとって、あの経験は今でも忘れられない。

もしかすると、あの時の経験が今の仕事に繋がっているのかも。

義務教育では出会えなかった魅力的な先生は、いつも塾にいた。

 

街は変わった。

授業前に腹ごしらえした駅近くのマクドナルドはもうないし、ごちゃついた印象だった駅前も、いつの間にかあの頃よりかはきれいになっている。

街は変わるけど、思い出は消えない。忘れても、ふとしたきっかけで鮮やかに思い出せる。

大人になると、そんな瞬間がいくつも蘇ってきて、景色が滲む。

 

水道橋について

「水道橋(すいどうばし)」の由来は、神田川にかけられた飲料用の水を通す橋があったことによるとのこと。

江戸から東京の水道の歴史がわかる〈東京都水道歴史館〉という施設もあるそう。知らなかったので今度行ってみます。(2021年5月現在休館中)

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浮世絵で見る水道橋

「名所江戸百景 水道橋駿河台」 / 国立国会図書館デジタルコレクションより

歌川広重「名所江戸百景」に描かれた、江戸時代の水道橋。天まで届きそうな鯉のぼり、一度見たら忘れられない大胆な構図。

この作品の読み解き記事がとても良いので、リンク貼っておきます。

粋でいなせで、鯉のぼり / WEDGE Infinity

 

関連記事:記憶の中の東京、花やしきのこと。

記憶の中の東京 #02 ー浅草・花やしき

 

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