こころが掻きむしられるような、そんな小説に会えた。
あっという間に1冊読み終わってしまい、気づいたらぼたぼた泣いていた。
あぶない、この世界に飲み込まれて1日終わってしまうところだった。
せっかく早起きしたのに。
けれど、この本の魔法は1日たっても続いている。
風邪をひいたわたしの頭をさらにぼんやりさせて、どうしようもなく胸をぎゅっとつかんだまま。
小説を読む愉しさは、自分の過去の思い出と交差することがあるから。
かなわなかった恋の、忘れかけていた思い出。
大学のサークルの部室の前。
「おすすめの映画とか音楽とか教えてください!」とお願いしたら、「紙とペンある?」と、無印のA6のルーズリーフにぎっしり書いた、あの人。
この本に出てくる「ボク」にとって「最愛のブスな彼女」が「信仰の対象」だったように、過去のわたしはその彼こそが、まさに信仰の対象だった。
オザケン、フリッパーズギター、カーディガンズ、フランスギャル。
ゴダールの「女は女である」、「ロシュフォールの恋人たち」…
リストの70%は制覇して、わたしの「好き」のベースになっている。
(とはいえ、この人が教えてくれたから好き、っていう感情ではなく、ほんとにその作品の魅力に惚れ込んだから、好きなんだと思う。)
マイナスとマイナスを掛けるとプラスになるけど、実際のところは、マイナスとマイナスがくっついたところで確実にプラスにはならない。
だからわたしの思い出は、恋人としてではなく、ただの片想いの思い出だ。
「男は過去の自分に用がある、女は未来の自分に忙しい」
引用:ボクたちはみんな大人になれなかった/燃え殻
昔のわたしは確実に「過去の自分に用が」あった側だった。
だからこそ、この小説が胸に響く。
過去の自分に用があった、自分に対して。
この主人公の「ボク」とわたしは、かなわなかった過去を自分の力に変えて、ちょっとだけ胸を張って生きている。
ダサくても社会の大波に飲み込まれても、自分なりにまぁまぁうまく暮らしてるよって。
きっと「最愛のブスの彼女」も、そんな「ボク」を見て笑ってくれているに違いない。
<追伸>
この本にびびっときたあなたには、ぜひこちらのマンガもおすすめ!
このレビューは「キリンジ/エイリアンズ」を聴きながら書きました。
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