• エッセイ

日常スケッチ ー 2022年6月

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校門の前で、背を向けて佇む二人の女の子がいた。

左にいた子の目には光る涙が。隣にいた子の方に顔を向け、なにか真剣に話していた。

下校の時間のようで、校門からは子どもたちがぞろぞろと帰り道を急ぎ、ずっとざわざわしていた。

ふたりが何を話していたのか、どうしてこんなに目立つ場所に立って泣いているのかは分からない。

でも、なにかを誠実そうに伝えようとする表情を見て、あまりに美しくて、訳もわからないけれどふたりをぎゅっとまとめて後ろから抱きしめたくなった。

 

誰かとあんなふうに腹を割って、芯から理解し合おうと話したことなんて、もうしばらくないような気がする。

人前ではいかに感情を抑えて、それがあたかも正しいかのように振る舞っているからなのか、あんなふうにぶつかり合える、その年代の頃を懐かしく思った。

そして、あの子たちのように泣いていたわたしたちを、温かくひそかに見守っていてくれた大人も、もしかしたらいたのかもしれない。

分かり合えなさにみんなで気の済むまで泣いて、しばらく気まずさが残って、少しずつ元に戻っていくような、そんなこともあったな。

 

あんなふうに、また誰かとどすんと腹を割って泣くまで話したいかと言われたら、まっさきに首を横に振る。そんなのはめんどうだ。

けれど、彼女たちの誠実な姿を見ると、わたしはもっと素直になってもいいのかもしれないなと、そう思った。

 

過去のエッセイ

梅雨を好きになる実験

 

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