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見えている世界

かもめと街 エッセイ 

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「毎日寒いし、こんな状況だから部屋に引きこもってて、何日もそう過ごしているうちに暗ーい気分になっちゃうんですよね」と、ほろっとこぼす。

すると、「家にいても暗い気分にはならないなー」と、なんでもないような返事が返ってきた。

そこで、自分が見えていると思っている世界はつくづく自分が決めているだけなんだなと思い知る。

いや、もちろんそうだとは理解しているけれど、最近は特に、こぼした水滴がじゅわーっと土に浸み込むかのように、じわじわと胸の奥まで届いているように感じる。

暗い気分にはならない、と答えたのは、よく行く店の人で、その人自身のことはあまり知らない。

けれど、なんとなく居るだけでまわりの空気を明るくしてくれるような雰囲気と心配りを持つ人だ。飾ったりどこかで学ばなくても、自然に心を惹かれるような接客ができてしまうタイプの人。

たぶん、わたしならネガティブに捉えてしまうこともほぼ全て動じずに、あるがままをポジティブに捉えるはず。

 

こんなこともあった。

「自分がウィークポイントだと思っていることって、他人から見たらチャームポイントなんですよ」と、赤ちゃんと張れるくらい小さなわたしの耳を指してそう言った。

そういう他人のいいところをきちんと褒められる点も、ふつうに生活しているとなかなか遭遇しない。

 

で、そんな彼に休日の過ごし方を聞いてみた。

「うーん、ロクなことしてないですよ。朝からビール飲んで、友達とだらだらテレビ電話したり」

 

次の休みの日、朝から熱燗飲んでみたりしようかしら。おちょこ1杯で上機嫌になれる自分が明るいうちから顔を赤く染める日曜日を想像してみた。

えんえんと夕方まで寝続けて、すっかり真っ暗になった部屋で「今日も1日ムダに過ごしてしまった」とシクシク泣いてしまいそうだけれど。

 

最近読んだ本

2021年夏の2ヶ月間を路上で暮らしてみたライターさんによる記録

過去のエッセイ:「アップデートされない」

アップデートされない

 

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