[連載]全日本ZINEファンクラブ 6通目

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※この連載は福岡にある「ブックバーひつじが」店主のシモダヨウヘイさんと好きなZINEをそれぞれ紹介しあうというコンセプトで始めました。毎月25日(シモダさん)・10日(チヒロ)の月2回、それぞれのサイトで往復書簡を公開します。前回のお手紙はこちら

ブックバーひつじが シモダさん

こんにちは。

永遠に続くかと思われた夏もようやく終わり、大好きな秋がやってきました。この連載もあっという間に6回目ですね。

毎月25日になるとシモダさんからお手紙が届き、それから翌月10日まで「まだ時間あるな」とのんびり過ごしていると「明日じゃん!」と焦ったりして。締め切りがあることで輝けるタイプなので、こうしてお手紙をやりとりできるのがありがたいです。

前回のお手紙も、変わらず熱量の高いおすすめをありがとうございます。

『ON-GROUND CINEMA』、とっても素敵ですね。映画館へ行くまでのことを描いている、というのにとても惹かれました。ドラマなどのヒット作のスピンオフのような視点がいいですね。あの事件が起きるまで、みたいな。

ちょっと話はズレるかもしれないのですが、わたしはコントが大好きなんですけど、自分の好きなコントって最後に大きなオチがあるものよりも、その途中にいくつも笑いが用意されている方が好きで。終わりはフワッとしているというか。終わりより、それまでの過程の方が自分にとっては大事なのかもしれないってふと気づきました。だからなんとなくですが、これはきっと好きな気がします。(伝わるかな)

『雑居雑感』、素晴らしいですよね。

このZINEを知ったおかげで、別の場所でもこうやって近しい活動をされている方がいることに(比べるのはあまりに恐れ多いですが)勝手に励まされた気になりました。

お店についていつも考えていることは、やはりお客さんでいるだけでは見えてこないことってたくさんあって。店を継続させることへの苦労や悩みとか。そういうのがZINEや本、はたまたイベントなんかで話を聞くと、より大切にせねばという思いが強まります。もちろん、全てに対して同じようにするのは難しいのですが、そういう心持ちは常に持っていようと思っています。多分その辺は自分が店に立っていた経験があるから、よりそう思うのかもしれません。

場所があるってありがたいです。会いに行けて言葉を交わしたり、おすすめのものを買ったり。SNSやネットショップも便利だし、最近ではバーチャルでのやりとりも話題になっていましたが、やはり、リアルでのやりとりに勝るものはないですよね。

「知らない誰かの生活を想像する」きっかけをくれるZINE、いいですよね。というか、ZINEを読む理由ってほぼそれに集約されるかもしれませんね。

今回紹介するZINEも同じテーマな気がしてきました。

急がば踊れ 37歳のバレエ日記 柳澤はるか

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こちらは東京・谷中にある「ひるねこBOOKS」さんで出会った作品。翻訳家の女性が知人限定で公開していた日記ブログをベースに作られたZINEです。

タイトルそのものも、ロゴデザインもいいですよね。本文のデザインもきちんと美しく読みやすくて。その日ごとにタイトルというか、小見出しが付けられているのも、リズム感があって目に留まりやすく読みやすいというか。

デザインや印刷は、印刷界で注目されている長野県松本市の藤原印刷が手がけていて納得。どうりでクオリティーが高いわけだ……!

内容は、36歳で再開したバレエ教室での出来事からふだんの生活への気づきを細やかに描いていて。

読んでいておもしろいと思う日記って、職業やライフスタイルが違えど、どこか生活での感覚が近い人の作品なのではないかと思います。本を通じて、どこかで自分も気づいていたけれど、言葉できてなかった気づきを掘り起こされたり、新しい見方を教えてもらったり。

著者の通っているバレエ教室は子どもから大人までのクラスがあるそうで、同じ場所に幅広い年齢層の人が集まるのが好きだと書かれています。ちびっ子のレッスンに居合わせたときのことや、同じ教室に通う60代の方が出てきたりと、ささやかな交流の場になっているようで。

読み進めるうちに、自分もずっとこういう場所を求めているような気がしてきました。とはいえ、わたしが突然バレエを始めたら、秒で足の指を骨折しそうですが……。

いい日記って、読んでいるうちに気づくと自分とも対話している作品なのかも。(日記に優劣はないのは承知の上でですが)

かなしいときはおいしいものをたべまして/ふるた もえ(Frühlingsfelder)

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こちらは1年前の文学フリマ東京で出会った作品。ZINEを買いに来てくれた方のブースへお邪魔して手に取ったものです。リアルイベントはこういう交流が面白いですね。

デザイナーである著者のフードエッセイで、まるで手紙をもらったかのような読後感とデザインがいいんですよね。

手書きでタイトルが書かれた白い封筒にZINEが封入されていて。そのアナログ感も素敵で、中身を見た瞬間のときめきも倍増しました。横長の豆本みたいなサイズもかわいい……。おそらくご自分で印刷されてるのかなと思うのですが、そのDIY感も、届く人だけに届いてほしい感じがして好きなんですよね。

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同じ方が作った卒業旅行の旅記録も、こちらは写真集のようで素敵。自分の思い描いたビジュアルを作れるっていいなぁ……!

三酒三様/浅沼シオリ・早乙女ぐりこ・武塙麻衣子

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もうシモダさんとわたしの間柄ではわざわざ取り上げるまでもないマスターピースですが、一旦語りたいのでお付き合いください。

どうしてわたしはお酒があまり飲めないのに酒飲みの人のエッセイが好きなのか。この執筆を機に数分だけ考えてみました。

……くいしんぼうが好き。

結論は秒で出てしまいましたが、そういうことなんです。わたし自身は酒飲みじゃないのに酒のつまみが大好きな理由は、なぜかお酒に合うおかずが好きなのと、少しずついろんなメニューが食べられるからなんだと思います。しかも和洋中どんな組み合わせでテーブルにあっても何の問題もない。

お店で注文してからごはんが届くまで、ひたすら壁に貼られた短冊メニューを眺めるのが好きなんですが、酒飲みの人のエッセイも、いろんなメニューが羅列されてるのがたまらないんです。

その食べものに対する知識とかうんちくにはそこまで興味がなくて、それよりも誰とどんな風に食べたか、とか、ひとりでどんなものをどう食べたかとか。そういう記録だったり、そこで見たもの聞いたこと、考えたことが書かれているだけで充分。

『三酒三様』はZINE界のスターみたいな三人が揃っていて、お正月の『Myojo』みたいなんですよね。誰も気負ってないけどそれぞれの実力がミルフィーユのように重なり合っていて。

武塙さんのエッセイはどこか物語を読んでいるようだし、早乙女ぐりこさんはその時あったことを真空パックして伝えるのがとても得意で、転んでもただでは起きないぞっていうのが伝わってくるところがパワー全開で好き。そして浅沼シオリさんのデザインがスタイリッシュと温かさが共存していて素敵。ZINEはファーストインプレッションが大事だと思うので、いいデザインであるだけで多くの人の目に留まりますよね。

後半の三人が谷中散歩を楽しみ、その様子をそれぞれが書き下ろす企画なんて最高。なんか、ドラマ『ブラッシュアップライフ』を思い出しました。(観てなかったらすみません)

同じことを体験していてもそれぞれ書くことが少しずつ違っていて、その目線の違いを味わえて群像劇を見ているかのよう。贅沢な体験でした。

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いやー、今回もだいぶ語り過ぎてしまいました。

10月22日の福岡の文学フリマまであと少しですね!シモダさんがあちこちのブースを廻っている姿が目に浮かぶようです。

こちらは11月11日に迫った文学フリマ東京に向け、新刊を製作中です!果たして完成するのでしょうか。締め切り直前に輝きが増すタイプなんだと自分に言い聞かせています。

次のお手紙は福岡の文フリでゲットしたZINE祭りになりそうですね!楽しみ!でも無理はしないでくださいね。いつでも楽しみに待っています。

次回の更新は「ブックバーひつじが」シモダさんです。(10/25公開予定)

 

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