ブックバーひつじが シモダさま
こんにちは。
前回のお手紙も、予想だにしないラインナップのご紹介ありがとうございます。
魔界のZINEが出てくるなんて誰が予測できたでしょうか。魔界フェス、とても興味深いです。参加したらこの世のあれやこれやがどうでもよくなりそう。
『いちいち言わないだけだよ。-ハロー!プロジェクト楽曲にまつわるエッセイ集-』、読みたすぎます! 曲にまつわる思い入れって人それぞれあるけど、わざわざ人に話す機会ってあんまりないかも。
ラジオのリクエストで曲が流れる前に推薦者のコメントが流れたりしますよね。あれを聞くと「よし!あなたがそんなに言うなら聴きます」という体勢になるような。まさにこのZINEで行われていることと同じ。その愛が巡り巡って誰かに届いて広がってゆく姿まで想像してジーンときました。(シモダさん、ハマってるし)
ハロプロは通ってこなかった道なので、これを読んで学びたい……!(アンジュルムをYouTubeで見ながら書いてるんですが、ダンス上手いですね……!!)
ファンが集まって思いの丈を綴る企画はいつかやりたいことのひとつなので、そういった意味でも気になる作品です。
まだまだお返事し足りなさを残しつつも、今回の紹介へ移りますね!
テーマは「理想のZINE」。
読む側として、それから作る側としての2軸で選びました。
『EMAVID NOTES』ゆっきゅん
好きなアーティスト全員に作ってもらいたい理想のZINEがここに。
もともとライブグッズの中でもパンフレットという、コアなファンが手に取るようなグッズが一番好きで。それはやっぱり、そこでしか読めないインタビューだったり制作裏話があるからなんですよね。
昔からいろんな方にハマってきましたが、この数ヶ月ぶっちぎりで大好きなのがゆっきゅん。
ゆっきゅんは自らをDIVAと称するアーティストなのですが、パフォーマンスが素晴らしいんですよね。いつか絶対さいたまスーパーアリーナでライブやると思っています。
このZINEはファーストアルバムの収録曲の歌詞に加え、セルフライナーノーツ的なものと、この歌詞に至るまでの手書きノートがそのまま載せられているんです!
好きなアーティストの!手書きノートはやばい!!(ごめんなさい、やばいしか言ってなくて)名作の歌詞が生まれるまでの試行錯誤の過程がリアルに見られるなんて……。「こういうのだよー、欲しかったやつ!」と叫びました。
ゆっきゅんが作り出す歌詞の世界観がすごく好きで。
※よくSNSで話題になっていて、わたしも大好きな曲『日帰りで』。冒頭のワンフレーズだけでこの曲がどんな物語を広げていくのかが見られて引き込まれます。(この曲はZINEには載ってないのですが)
まだ誰も言及したことがないであろう感情や、日常の細やかでリアルな描写が伝わってくる歌詞が唯一無二なのです。まるで物語が浮かび上がってくるようで、それでいてたったひとりのわたしのために歌ってくれているような。
わたしの音楽の趣味はだいぶ偏ってはいるのですが、今まで聞いてきた中で、こんなに歌詞が好きだと思うアーティストっていなくて。
なんだろう、側から見れば頑張っていて素敵な人なのに、いろんなことを考えすぎて自己肯定感が低くなっている人っていますよね。あと、他人のことや空気を察するがあまり自分の気持ちを抑え込みがちな人とか。(なんかうまくまとめられないのですが……!)
そういう人たちをぜんぶ解放&救ってくれる歌詞なんですよ。そのままでいることを応援してくれるというか。
わたしも自分の素直な感情に蓋をしないようになってこれている気がします。つい自分のことを後回しにしがちな夫にも「え、それ自分のこと大事にしてなくない?」と突っ込んだりして。これは完全にゆっきゅん精神のおかげ……!
これ以上書くと涙が出てくる&まったく先に進めないので次へ進みます……!
VACANCES バカンス
ひつじがさんでも取扱っている『VACANCES バカンス』の2号は、前述のゆっきゅんも寄稿していて、わたし的最強メンツが揃ってて驚きました。
こんなに読みたい人が集まったZINEは未だかつてなかった……! SNSでの告知を目撃した瞬間、「うわー最高じゃん!」と叫びました。
著名人が登場する企画となると、個人でやるとすればよほどの熱量や信頼関係、はたまた企画のおもしろさなどがなければ実現が難しいところ。どこかのメディアでやるとなると、そもそも企画を通すのが難易度高いという問題もあります。
作っているのはライター&編集者の原航平さん・上垣内舜介さん。みずから主導権を握って選んだ人たちに登場してもらうというのは、どこかのメディアを介在させるのとは違った、並々ならぬパワーが必要だと思うんですよね。
企画するのも声をかけるのも、取材の段取りを整えたり書いたり撮ったり編集したり。もちろん本職での経験の延長上にあることではあると思うのですが、自主的にやるのがすごいこと!
(だいぶ前、かもめと街や別の媒体でもそういう企画をやったのですが、本当にパワーが必要でした……!!めちゃくちゃ楽しかったし、またやりたいとは思っています)
この号で感激したのは、演劇&コントと瞬く間に名声を博し、気づけば「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023(世界を変える30歳未満)」にも選ばれたダウ90000の蓮見さんと「ODDTAXI」のテーマソングが大ヒットしたことでも話題になったスカート澤部さんの雑談企画。(澤部さんは昨年のダウ90000の演劇公演に曲を提供されていたのです)
「どこかのメディアで対談」となるとテーマ性を持たせたり、きちんとどこかに辿り着かないといけない感じはどうしてもあるはず。わかりやすさや伝わり具合が大事ですからね。こう伝えてほしいという意向がある場合もあるでしょうし。
でも、雑談と掲げられることで、二人の対談をフラットな気持ちで読めるのが新鮮で。好きな人同士の雑談なんて聞きたすぎるでしょといった感じです。
以前のこの連載でも話題に上がりましたが、まさに商業出版と個人制作のZINEとの垣根が壊されているように感じました。
いつかこんな素晴らしいZINEを作りたいと願う同志と出会ってバチバチにかっこいいものを作りたい。そのためにも細く長く燃えていなければ! と決意を新たにしました。
My Lost “C” in TOKYO 宮崎希沙
こちらはシモダさんも大好きな、中野のタコシェでおすすめしてもらったZINE。
以前タコシェさんに「店の記憶を自分なりに残したいんです」というお話をしたことがあったんですね。その流れでおすすめしていただいたのがこちらでした。
カレー好きのデザイナーさんが、閉店(移転含む)するカレー屋さんを中心とした飲食店の思い出を綴っています。街や店が自分の人生と深く関わっていることが文章からしみじみと伝わってきます。
ちなみにこのZINEはなんと220円!
16Pのミニブックなんですが、この気軽さや買いやすさはZINEらしくていいなと思っています。サクッと読めるボリュームで。おそらく印刷所を通さず自分で製本しているのだと思うのですが、パッと目を引くデザインがいいですよね。
作者の方は2010〜2019年まで「CURRY NOTE」というzineを作っていたとのことで、「日記的なパーソナルなもの」として作っていたものが想像以上に広がっていることへの戸惑いや「自分勝手に書くことへの抵抗」にも言及していて、その点にもちょっと共感しました。(わたしも日々悩んでます)
気になる店の情報とかをSNSのまとめ投稿やグルメ本を見るのもいいんですけど、最近は誰かのパーソナルな思い出を本やZINEで知るほうが断然好きで。ここでも紹介されている店、近々行ってこようと思います。
以上、理想のZINEを紹介しました。
前回のお手紙で紹介してくださったハロプロ好きが集まって作ったエッセイZINEみたいなの、いつかゆっきゅんをテーマに作りたいわ〜!って想像しました。いや、作りたいよりも、読みたいのかも。同じ曲を違う誰かがどんな思いで聞いているか、とても興味あります。
誰かのことが好きすぎて、もらったパワーを全部返すかのように作られたものって素敵ですよね。ZINEが好きなのってそういうところなのかも。そのままではいられない衝動というか。どんな作品であれ、突っ走っているものしかないところが魅力なのかもしれません。
なんだか昼間に書いていたはずなのに、夜に書く手紙の濃さになっている気がしますが、今回はこの辺りで。
次のお手紙も楽しみにしてますね。
次回の更新は「ブックバーひつじが」シモダさんです。(9/25公開予定)