感受性のアンテナを張り直す

かもめと街 エッセイ

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喜怒哀楽の出力調整が壊れていた。

この2ヶ月間の不安定な状況から、まだ完全に復活できずにいるのは仕方がない。

いつも何かに怯え、人にも会えず、無力さを突きつけられる毎日。でも、そんな抑圧された苦しさを吐露することさえ、「みんな同じだから」と無意識に我慢を強いられている気がした。

だから、最低限の心の強さを守るために、何かを感じるアンテナの受信レベルを最小にする。「こんな状況でも、毎日たのしく生きていよう」と鼓舞して、こんな状況なんて、なんでもないやと思うようにしていた。

それはそれでよかったのだけれども。

今だからできること、そんなときだからこそ気づけたことに感謝しても、今だからできないことが多すぎて、見えない先に絶望した。

なにかに心を動かすのはとても疲れる。

だから、アンテナを強制終了させた。

 

まだまだ見えない敵との戦いは続く。

けれど、ようやく感受性のアンテナを張り直すときが来たようだ。

「新しい生活様式」なんて言われなくたって、わたしたちは自分や好きな人や店を守るために、最大限に心を砕く。

なにも気にしないでいられた過去の日常には、当分戻れそうもない。

けれど、このやるせない痛みも苦しみも恐怖もきっと、少しずつ忘れていく。(たとえ、忘れずにいる必要があったとしても)

なにかに喜んだり怒ったり、哀しんだり、楽しくなったり。

ときに面倒くさい心の機微を、自分の手で取り戻す。

映画やマンガ、Spotifyから偶然流れる音楽、小説やエッセイ、それに配信ライブ。時間があっても観られなかった作品たち。あたらしい試み。久しぶりに会った友人や大好きな店の人。別の場所で出会った、新しい人たちとの出会い。

 

今はまだ、すぐに心がいっぱいになってしまうけれど。きっと少しずつ心の容量が増えて、前よりもいろんなことが受け止められるようになるはず。

後ろ向きな日も、いつになく前向きになれる日も。

いつか、振り幅が広いことすらおもしろがれるようになれるのが理想。

 

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