いちごジュースで満足するはずだったのに。
早起きして満開の桜を見に隅田川沿いを歩いた。
朝の少しの時間で戻る予定が、あちこちの桜を愛でていたら2時間をとうに過ぎていた。そろそろ足も痛いし、気になっていた喫茶店がこの近くだったから、と向島へ向かう。
向島にある喫茶店といえば〈カド〉と、その近くにある〈純喫茶 マリーナ〉。
純喫茶で東京をめぐる旅 vol.4 向島〈カド〉で生ジュースを
〈純喫茶マリーナ〉の向かいからは、三味線を弾く音が聞こえる。どうやら芸者さんが練習する音のようだ。
赤・青のストライプに白色で「マリーナ」のロゴ。トリコロールカラーの装飾テントに窓にはレースカーテン。外からは中の様子が見えず、なかなか入る勇気が出なかった。
「今日こそは」と扉を開けた瞬間に、今まで来なかったことを後悔した。
船の操縦室の眺めのような壁には、海を思わせるような青い壁紙が貼られ、中央には船のハンドルが飾られている。ハンドルは「舵輪(だりん)」と呼ぶそうだ。
まるでこの店は、まるごと遊覧船のよう。
航海中のように揺れてはいないけれど、常連さんがのんびり新聞を読む姿を見ていると、同じ船に乗った乗客のようにも思えてくる。
春の味覚・いちごジュースを片手に妄想旅行をしていたら、キッチンからじゅわーっと食欲をそそる音が聞こえてきた。よいBGMだ。
「まだ11時前だけれど、もうお昼ごはんたべていいですかね?」と心の中で自分に聞き、次の瞬間にはナポリタンが目の前に到着していた。
あつあつの鉄板ナポリタンは香ばしく、あっという間にぺろりと完食。
「美味しかったです」と伝えると、「ありがとう」とマダムの店員さんが言った。その声の高らかで上品な声質は、どんな人でも目尻が下がってしまうような温もりを感じた。
純喫茶で東京をめぐる旅 墨田区向島〈純喫茶 マリーナ〉店舗外観
墨田区が誇る名喫茶が、向島には2軒。〈純喫茶 マリーナ〉の最寄り駅は、都営浅草線または東京メトロ半蔵門線の押上駅から徒歩で10分ほど。
浅草駅からだと……20分くらい歩けば着くかな。隅田公園にある黄色い橋の桜橋を渡り、墨田区側へ。堤防の階段を降りて少し歩き、右手の角を曲がったところにあります。
オレンジの背景に「マリーナ」のロゴがかわいい!
純喫茶で東京をめぐる旅 墨田区向島〈純喫茶 マリーナ〉店内
店の中はまさに船上のようでした。クッション性のいいソファが置かれたテーブル席。
壁の濃いブルーに舵輪。
「WELCOME CAFE MARINA」と店名が書かれたステンドグラスもどこかほのぼの。
古くから飾られていたものだと思っていたけれど、この作品をよく見ると後方に描かれているのはスカイツリーでは……?
マガジンラックも良い並びです。「美味しんぼ」に「ちびまる子ちゃん」。喫茶店系のムック本にまぎれて電話帳とかがあるのもなんだかいい。久しぶりに見たな、電話帳。
純喫茶で東京をめぐる旅 墨田区向島〈純喫茶 マリーナ〉メニュー
昔ながらの喫茶店の定番メニュー、生ジュース。
〈純喫茶 マリーナ〉のいちごジュースは、牛乳たっぷりのいちごミルク。ミキサーで撹拌する音も愛おしく感じちゃう。
この日はまだ11時前だったのですが、近くの席の人が注文しているのを見ていたら「食べるしかない!」と思って。
太麺のナポリタンは熱々の鉄板焼きで。ハムとピーマンと玉ねぎが入り、ほんのりトマトソースの酸味を感じる鉄板ナポリタン。熱でところどころおこげができた麺がたまりません。
ナポリタンにはコンソメスープとサラダがついて、お値段800円。
モーニングセットからランチセットも充実していて、何度来ても楽しめそうです。
純喫茶で東京をめぐる旅 墨田区向島〈純喫茶 マリーナ〉店舗情報
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純喫茶で東京をめぐる旅 vol.4 向島〈カド〉で生ジュースを
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東京でクリームあんみつの旅 vol.1 ー向島〈あんみつの深緑堂〉