「お店は、昭和25年からやっているんですよ」
お店のおかみさんの一言で、言葉に詰まった。
大きな暖簾と、今ではほとんど生産されていないという、デザインが施されたレトロなすりガラスに八角柱の壁掛け時計。
外からは一切、中の様子が見えないお店の扉をがらんと開けた。
「こんにちは」と入店すると、カウンターの前で座ったまま眠ってるおばあちゃんがいる。
「開店10:30ってネットには書いてあったけど、もしやまだやってないのでは…」と恐る恐る入ると、「…あら!寝ちゃってた!」と小さく笑って「どうぞー」と笑顔を見せてくれた。
「きっとここはいい店だ」。そう確信してお店を見渡した。
「エビフライが揚げたてですよ」と言われて、テーブルを覗くと、小皿にちょこんとのった、小ぶりなサイズがかわいらしいエビフライが見えた。
厨房とつながったショーケースをのぞくと、選びきれないくらいたくさんのおかずがずらり。ああ、広島に住んで毎日通いたい。
この大衆食堂がモダンな雰囲気を醸し出しているのは、もともと洋食屋だったから。しばらくして、気軽に使える食堂に変わったそう。
「17歳の頃からここで働いてるんですよ。今は87歳で。え、お元気そうだって?そんなに元気じゃないけど、なんとかやっています」
広島に原爆が落ちた年が昭和20年。たった5年後にスタートした南星は、どれだけの人の胃袋を支えてきたのだろう。
「これからお帰りになるんですか?気をつけてね」
87歳とは思えぬ、はきはきとした受け答えに、オーダーを厨房に伝えるときのはっきりとした通る声。声の調子では、完全にわたしは負けている。佇まいが格好いい。
縁がなかった広島に、帰りたくなる場所を見つけてしまった。
広島のおすすめランチ〈お食事処 南星〉店舗外観
広島市を走る路面電車に乗って、胡町から徒歩5分ちょっと。ザ・夜の街という雰囲気の街も、昼間は閑散としておとなしい。「無料案内所」って書いてある看板をいくつも見かけたし、いちばんツボに入ったのは「階段上がっていきなり美魔女」っていうお店のフレーズでした。
東京で例えるならば、池袋西口。そんな繁華街にある〈お食事処 南星〉へ。
広島のおすすめランチ〈お食事処 南星〉店内
広島でランチなら、〈南星〉をおすすめしたい!旅行でどこかへ行っても、「地元の人がふだん行くような店に行きたい!」と思うような人にはぜひとも。
朝ドラのセットかな?と思うほどレトロな空間。
「昭和にタイムスリップしてしまったのでは…」と思うほど、時が止まったかのような味わい深い店内。でも「令和おめでとう」みたいな新聞が飾ってあるし、カレンダーは2019年だし、電子レンジもあるし。
11時ごろにお邪魔したところ、しばらく食堂独り占めでした。
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広島のおすすめランチ〈お食事処 南星〉メニュー
〈南星〉のメニューの短冊を見てるだけでテンションが上がるのは、きっとわたしだけではないはず。焼きそば、チキンライス、オムレツ、親子丼、肉丼。どんな日でも食べたくなるメニューがある。そして安い!
「エビフライ、揚がりましたよー」と誘われて。
わたしの知ってるエビフライと違う。小エビをつなげて揚げてて食べやすいしうまみが凝縮してる…!ミニチュアみたいでかわいい…!
ガラスのショーケースには、ずらりと並んだおかず。
〈サバの煮付け〉がおいしいと、口コミでは書いてあったけど、エビフライに決めちゃったので次回への楽しみに。
それぞれ好きなものを選んで、自分好みの定食が作れますよ。
梅のおにぎりは、ふわふわ・あつあつの握りたて。豚汁はお椀にたっぷり。どれも最高に美味しかったけど、あえて一位を決めるなら、だし巻き卵!
甘さとしょっぱさのバランスもちょうどよくて、じゅわーっと口の中で広がるお出汁のうまみ。「おいしいー!」と顔がほころびました。
後から来たお客さんは、オムレツをオーダー。銀色のオーバル型のお皿にのった、できたてのオムレツもおいしそうだったなぁ。
しみじみおいしい、食堂の味わい。温かく迎えてくれたおばあちゃんに会いに行きたいな。お近くの方はぜひ。
広島のおすすめランチ〈お食事処 南星〉店舗情報
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