緑が恋しくなり、奥多摩へ行った。
ゴールデンウィークの予定を決めかねていた我が家に遠出の選択権はなく、近場でリフレッシュできるところを、とお決まりの中央線へ。
10時前に奥多摩駅に着いたものの、すでに都会を脱出してきた人たちだらけ。
駅の周辺にはキッチンカーが出店していて、さっそくわさび稲荷を食べる。奥多摩のきれいな水でわさびを作っているそう。
まずは駅から近場の氷川渓谷へ向おうとすると、大きな杉の木が!
「氷川三本杉」と言って、現在は43mの高さがあるとか。
こちらは路上で出会った狸。
氷川渓谷、思ったより近くて助かった!駅から15分ほど。
登計橋の下でひと休み。新緑の季節のまぶしさよ。
と、しばらく眺めていたものの、思ったより肌寒く駅近くのビジターセンターへ戻る。
すると、向かい側にシブい店を見つけた。
ピンクの壁とファンシーなブタが目印の、まるにや肉店。
名物の揚げたてのコロッケ、そして大多摩ハムのハムカツを買う。コロッケのマッシュ具合がとろとろで美味しい。
「さっきわさび稲荷食べたばかりだよね?」と夫に引かれたけれど、半分ずつわけて食べたら取り合いになった。
しかし、ほんとうに食べてばかり。さすがに時間も余っているので、奥多摩湖へ行くバス乗り場へ。
駅から奥多摩湖へはバスで20分ほど。カーブに揺られる旅に眠気が襲うが、眠る間も無く湖に到着。
真っ平らな湖面を見ていると落ち着く。一周するとなると、ほぼ同じ風景を12km歩くらしい。もちろんゴール地点にはちょうどよくバス停があるわけではない……!
ほんとうは「麦山の浮橋」という、湖を渡れる橋を歩きたかったのだけれどまた次回に。
ということで、30分くらいのんびり歩いたのち、バスで駅へ。
奥多摩わさび本舗山城屋で、生わさびと本わさび漬と季節限定わさびの茎の醤油漬けを買う。わさびが好きではない方なのに、醤油漬けのほんのりと香るわさび感にやられた。
橋を渡り、久しぶりにもえぎの湯に行こうと思ったものの、男性40分待ち、女性10分待ちと聞いて断念し、歩いて駅へ。
ちびちびとつまみ食いしていたものの、きちんとごはんを食べていなかったせいで、小腹はずっと鳴りっぱなしだ。
「あの味、忘れられないよね」と、もう一度まるにや肉店へ。「また来ちゃいました」と言うと、「やっぱりそうだよね、見たことあると思った」とお母さん。
揚げたてにこだわり、使う油はラードだから重たくならないんだとか。サラダ油の方がどうも重たくなりやすいそう。
かなりご高齢のおじいちゃん店主(たぶん)が、「うちのコロッケとメンチは、どこにも負けない!」と。格好いい! わたしもこんな風に自分の仕事に自信を持ちたい。
「また少し経つと食べたくなるんだよ」と言い、自分の作ったものに対しての愛が伝わってきた。ああ、コロッケを食べるためだけに奥多摩へ来たい。
駅前の「VERTERE BREWERY」はクラフトビール工房で、シンプルでスタイリッシュなパッケージがいい。1本買って揚げ物のおともにする。
その店の側には飲み屋街に続く細い路地があった。飲み屋の前にはハイカーたちのバックパックがどすんと置かれている。
白と黒の猫が人懐こく寄ってきた。長い尻尾をピンと立ててスマホのカメラを構えるわたしへ突進する。
「コロッケ冷めるから早く食べようよ」と夫に急かされ、駅前の広場へ向かう。猫がいるとその他のことがどうでもよくなるのはわるい癖だ。
おかわりのコロッケと清涼感のあるクラフトビールもしっかりおなかに収め、顔は真っ赤でほろ酔いに。
どの電車で帰るか迷っていると、「東京方面に帰るなら、16:53発のホリデー快速に乗りなよ」と知らないおじさんが教えてくれる。アウトドアでよく遭遇する、自然とお酒が縮めてくれる距離感の心地よさが好きだ。
帰りの電車では、『浅草博徒一代―アウトローが見た日本の闇』の続きを読む。宇都宮のお金持ちの家に生まれた少年の一生についての聞き語り。冒頭から刺青の話は出てくるわ、およそピクニックには不釣り合いなチョイスだけれど、続きが気になるから仕方がない。
夏が近づいている。うす明るい夕空が帰り道を彩った。
7月のエッセイ