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決めない散歩 ーお台場編

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平日の観光地は寂しげで、どこかよそよそしさを感じるのはなぜだろうか。

きっと、人が多く集まるように設計されているから、広々としたスペースが切なく感じるのかもしれない。

今や東京の有名な観光地では、平日でも人がごった返していて、いつまでも混雑に慣れないわたしはできるだけ人の少ない場所へ向かう。

予定がぽっかり空いた午後、ゆりかもめに飛び乗る。好きな芸人さんがお台場のテレビ局の昼帯番組に出ると聞いて、「今から向かえば間に合うじゃん」と華麗に東京の交通網を駆使した。

番組をしっかり見たことはなかったけれど、以前旅先の喫茶店のテレビでその番組が流れていたのを見ていたのだ。

ゆりかもめに乗るのは、たぶん4年ぶりくらい。たしか前は東京ビッグサイトに展示を見に行ったんだった。

平日の昼間に浮き足立って電車に乗っている大人はわたしくらいで、その罪悪感を少しだけ胸に抱えながら窓の景色を眺める。

緑化された大きなオフィスビル、鉄骨がうねうねした蛇の塊のようになっている解体現場、コピペしたような同じ形が並ぶ平たい倉庫、貨物船にカラフルなコンテナ。

街を俯瞰して見られるのは観光用の路線ならではかもしれない。

何度見てもレインボーブリッジが見えた瞬間はなんだか嬉しくなるのに、渡っている瞬間は特に面白い景色ではなく、「そういえば父親が『レインボーブリッジって歩いて渡れるんだよ』って話してたけど、一度も実行してないな」と思い出す。

頭に浮かぶのももう何回目だろう。埋立地と海上をつなぐ生命線は思ったよりも巨大で長い。

たぶん、明日にはまた忘れていて、きっと永遠に歩かないような気がする。でもおそらく、あの橋は歩くのが一番いい景色が見える気がしているのだ。

 

台場駅に着き、球が浮かんでいる巨大な建物に向かう。外の観覧スペースは思ったよりも小さく、アイドルの応援うちわを持った人たちが静かにずらっと並んでいて、そのうちに今日出演する芸人さんたちがずらずらと外からスタジオを囲むように出てきた。

他に誰が出るか何も調べずに来たので、「あ!あの人だ」とか密かに思うものの、とにかくアイドルのファンの人が圧倒的に多い空間ではしゃぐわけにもいかない。というか、そもそもはしゃいでいてもそれが外に伝わりにくいのがわたしだ。

推しの人にアピールする人たちを横目で見つつ、ここまで来ているくせに急に気恥ずかしくなって人影に隠れる。

ということで、ひっそりと物陰に隠れながら一部始終を見た。ビル風がすさまじく強く、スタジオ内の音は残念ながらほとんど聞こえない。

多くの芸人さんたちがモニターを囲んで他の人のネタを楽しそうに笑って見る姿にぐっと来た。集まった芸人さんの一部は番組に出られなかったようで(非情)、ここに来れても出られない悔しさもあるのか、と少し切なくもなった。

観覧を切り上げ、下りのエスカレーターに乗り、この街を散策しようかとひらめく。

地図を見る。

当たり前だけれど、観光用に作られた街なので、どこもかしこも巨大な観光スポットだけがある。それが四方に配置されている。

想定外がほとんど起こらないであろう場所。分かりやすく整備されていて、観光客が迷うことのないよう、そして歩きやすいように全て整えられている。

目的地としては申し分ないほどに分かりやすい。いくら混んだ日に来ようとも、街のあちこちに余裕があるからどこでも休みやすい。

でも、どこか虚しい気持ちが抑えられない。

それはきっと、作られ過ぎているからなのだろうと思う。

 

「まちづくり」という言葉が流行って久しい。

地方に新たな人が流入して、おもしろい街になっている実例を聞いたり、実際に訪れると「ああたしかに」と思うことはたくさんある。それは地元の人たちを尊重しつつ新しい試みを始めているところにそう思う。

でも、ここはそもそも埋立地として存在している。商業施設がそれぞれ在るというだけだからなのか、30年近く経った今でも街への愛みたいなものが見えてこない。

それがなんだか虚しく感じるのだ。

観光として作られた街だとしても、もうちょっとその地に愛を込めてもいいんじゃないだろうか。

作られすぎることへの違和感。想定外が存在しない街。

今までモヤモヤしていた気持ちはこういうことだったのか。愛される街になろうなんて、はなから思ってないかもしれないけれど、その地がもっと愛される街になったら、散歩も楽しくなるのかもしれない。いや、何もないところにいかに楽しさを見出すか、自らチャレンジするべき時なのかも。

気づかなくてもよかった気持ちを鎮めてくれたのは、そんなわたしの面倒臭い気持ちを知らずに自由の女神像に向かって飛び交うスズメだけだった。

 

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